トランプ前政権の仮想通貨政策を徹底解説
懐疑的な姿勢から規制強化まで、2017-2021年の暗号通貨政策を詳しく分析
目次
トランプ前政権の仮想通貨政策概要

ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ大統領を務めた2017年1月から2021年1月の期間、仮想通貨・暗号通貨に対する政府の姿勢は全体的に懐疑的で規制強化の方向でした。
重要なポイント
トランプ前政権は仮想通貨を「通貨ではない」と位置付け、詐欺やマネーロンダリングのリスクを懸念していました。これは現在の親仮想通貨的な姿勢とは180度異なります。
当時の政策方針は以下の特徴がありました:
- 仮想通貨の価値安定性への疑問視
- 違法活動での利用可能性への懸念
- 既存金融システムへの脅威としての認識
- 規制当局による厳格な監視体制の構築
2019年のビットコイン批判発言

2019年7月11日、トランプ大統領(当時)はTwitterで仮想通貨に対する明確な反対姿勢を表明しました。この発言は仮想通貨業界に大きな衝撃を与えました。
具体的な発言内容
「私はビットコインやその他の暗号通貨のファンではない。それらは通貨ではなく、その価値は非常に不安定で、何の根拠もない。」
– ドナルド・トランプ大統領(2019年7月11日のツイート)
この発言の背景には以下の要因がありました:
価値の不安定性への懸念
ビットコインの価格変動の激しさを「薄い空気のような根拠」と表現し、通貨としての信頼性を疑問視しました。
違法活動での利用への警戒
「規制されていない暗号資産は、麻薬取引やその他の違法活動を促進する可能性がある」と述べ、犯罪利用のリスクを強調しました。
米ドルの優位性主張
「アメリカには唯一の真の通貨があり、それは世界で最も支配的な通貨である」と米ドルの地位を強調しました。
FacebookのLibra(現Diem)プロジェクトへの反対

2019年6月にFacebookが発表したLibra(後にDiemに改名)プロジェクトに対して、トランプ政権は強い反対姿勢を示しました。
Libraへの具体的な懸念
規制上の問題
- • 銀行免許の必要性
- • 既存金融規制への準拠
- • 国際的な規制調整
安全保障上の懸念
- • マネーロンダリング対策
- • テロ資金供与の防止
- • 利用者データの保護
トランプ政権の要求
「Facebookやその他の企業が銀行になりたいなら、新しい銀行免許を取得し、国内外のすべての銀行規制に従う必要がある」と明確に要求しました。
SEC(証券取引委員会)による規制強化

トランプ政権下のSECは、ゲイリー・ゲンスラー委員長の前任者であるジェイ・クレイトン委員長(共和党)の下で、暗号通貨に対する厳格な規制アプローチを取りました。
主な規制政策
ハウイ基準の適用
ICO(Initial Coin Offering)で発行されるトークンの多くを「証券」として分類し、証券法の規制対象としました。
エンフォースメントによる規制
明確なガイドラインではなく、個別事案への法執行を通じて規制の枠組みを構築する手法を採用しました。
リップル社への訴訟
2020年12月、クレイトン委員長退任直前にリップル社のXRPを無登録証券として提訴しました。
財務省のマネーロンダリング対策
トランプ政権の財務省は、スティーブン・ムニューシン財務長官の下で、仮想通貨のマネーロンダリング対策を大幅に強化しました。
主要な対策措置
対策分野 | 具体的な措置 | 実施時期 |
---|---|---|
KYC/AML規制 | 仮想通貨取引所への本人確認強化要求 | 2018年〜 |
FATF指針 | 国際的な顧客データ共有ルールの策定 | 2019年 |
FinCEN規制 | 仮想通貨事業者の登録義務化 | 2017年〜 |
制裁リスト | 仮想通貨アドレスの制裁対象指定 | 2020年 |
ムニューシン財務長官の発言
「我々は仮想通貨が秘密口座と同等になることを許さない。適切な利用は認めるが、違法活動での継続的な利用は容認しない」
前政権と現在の政策比較
トランプ氏の前政権時と現在(2025年)の仮想通貨政策には大きな変化が見られます。
項目 | 前政権時(2017-2021) | 現在(2025) |
---|---|---|
基本姿勢 | 懐疑的・批判的 | 支持・推進 |
ビットコインの位置付け | 「通貨ではない」 | 「戦略的備蓄」対象 |
規制アプローチ | 規制強化 | 規制緩和 |
業界との関係 | 対立的 | 協調的 |
選挙資金 | 受け入れ拒否 | 積極的受け入れ |
政策転換の背景
市場の成熟
機関投資家の参入と市場規模の拡大
若年層支持
仮想通貨保有者からの政治的支持獲得
選挙資金
業界からの大規模な政治献金
今後の展望
トランプ氏の前政権時の経験と現在の姿勢の変化を踏まえ、今後の仮想通貨政策には以下のような展開が予想されます。
規制の明確化と緩和
前政権時の「エンフォースメントによる規制」から、明確なガイドラインと業界に友好的な規制フレームワークへの転換が期待されます。
業界との協調関係
前政権時の対立的な関係から、業界との建設的な対話と協力関係の構築に向かう可能性が高いです。
国際競争力の向上
「アメリカを仮想通貨の首都にする」という公約の下、他国との競争優位性確保に注力すると予想されます。
重要な考察
前政権時の厳格な規制アプローチの経験が、現在のより洗練された親仮想通貨政策の基盤となっている可能性があります。規制の必要性を理解した上での、バランスの取れた政策運営が期待されます。
まとめ
トランプ前政権(2017-2021年)の仮想通貨政策は、現在の親仮想通貨的な姿勢とは対照的に、懐疑的で規制強化の方向でした。
前政権時の主要な特徴
- ✓ 2019年のビットコイン批判ツイート
- ✓ FacebookのLibraプロジェクトへの強い反対
- ✓ SECによる厳格な証券法適用
- ✓ 財務省によるAML/KYC規制強化
- ✓ 「米ドル至上主義」の維持
この大きな政策転換は、仮想通貨市場の成熟、政治的影響力の拡大、そして選挙戦略の変化を反映しています。前政権時の規制経験が、現在のより洗練された政策アプローチの土台となっていることも注目すべき点です。
投資判断への注意
政策の変化は市場に大きな影響を与える可能性があります。投資を検討される際は、政治的リスクも含めて慎重に判断することをお勧めします。
最終更新:2025年6月1日
本記事は公開情報を基に作成されており、投資アドバイスではありません。
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